blogユーザーインタビュー: 株式会社3D Printing Corporation
3Dプリンティングという新しいデジタル製造技術を活用し、モノづくりの在り方を変え、次世代サプライチェーン構築の未来に挑戦するベンチャー企業、株式会社3D Printing Corporation。その現場では、研究開発と知財戦略を率いるCTO 古賀氏のパートナーとして、Amplifiedが活躍していました。
少年時代に熱中したゲーム開発の経験から、ゲーム上のプレイヤーの動きに影響を与える「破れないルール」の価値と、それらを自らが創る重要性を身をもって感じていたという古賀氏。現在は、3Dプリンティングという新しい技術を基盤に、サプライチェーンの新たなルールを作り出そうとしています。新サービスに向けた研究開発と、破れないルールを支える特許網の構築にどのようにAmplifiedを活用し取り組まれているのか、お話を伺いました。
── 3D Printing Croporationでは、お客様が3Dプリンティング技術を使うのに足りない「抜け」を埋めると言う形でサービスを提供されているとお聞きしました。
当社の事業は、大きく3つの方向性があります。まず、3Dプリンター導入のコンサルティング。導入検討中のお客様の相談にのり、最適な機種を選んだり、それを販売あるいはリースしたり、もし僕らの工場の中に設備があれば、お貸ししてパーツを製造いただくこともあります。
2つ目に、DFAM(ディーファム:Design for Additive Manufacturing)と呼んでいる、付加製造のための設計事業です。簡単に言うと、3Dプリンティング用のデータ設計のサポートです。3Dプリンターは、基本的にデータから物を作るシステムなので、そのメリットを最大限に活かすには正しいデータが必要です。お客様の欲しいものを3Dデータ化したり、更に高性能化したりするお手伝いをしています。時には、単純にデータを渡すだけではなく、物質化まで行い、パーツとしてご提供するケースもあります。
そして3つ目が、この11月に開始した新事業で、3Dプリンティングの製造技術をワンストップで提供するデジタルプラットフォームです。ユーザー側がプラットフォーム上に設計データを入力すると、データの不備や失敗の可能性が高い箇所を自動で指摘して、データ修正の後、パーツを製造、納品する仕組みです。
従来の”型”から造る製造技術では、何十個以上からでないと対応が難しいという製造側の縛りがありました。3Dプリンティングでは、1パーツから対応ができます。年内には、月数千パーツの製造速度には達する見込みで、最終的には僕らの工場を拡張していくことで、月間100万パーツにも対応できるようになります。1パーツから数百万パーツまで、この柔軟性は3Dプリンティング技術だからこそできることです。
3Dプリンティング技術を使った製品開発では、新しいものが非常に生まれやすいんです。
今までの製造方法では作れなかった物を、全く違う機構で生み出すことができるからです。
例えば以前、ある消費財のパーツ改善の相談を受けた際に、従来の製造方法では、どうやっても金属材料を組み合わせざるを得ず、リサイクル不可能なパーツに仕上がってしまうという課題をお持ちでした。それなら最初から、今までと全く違う機構で、単一材料で設計してしまったら良いのではないですか?と、3Dプリンティング技術で可能となる設計をお見せしたところ、大変驚かれ、我々もそのアイデアを特許化することになりました。
3Dプリンティングは、今までの製造とは方法もルールも全く異なるので、何が良い、どういう物はお金がかかる、かからないという基準が違います。3Dプリンティング技術のルールに照らし合わせて、製品を同じ”機構”で再現するのではなく、その製品の”機能”を3Dプリントすると考えると、全く違う良いものが出来上がったりするんです。3Dプリンティング技術では、こう言った革新的な製品が生まれやすいので、それらアイデアの特許化は常に身近にあります。
3Dプリントで歯ブラシを製造したこともあります。店頭に並ぶ歯ブラシは全て似た形状をしていますが、僕らが3Dプリントで生み出した歯ブラシは、全く形状の異なるものでした。それは、歯ブラシの形状ではなく、磨いて歯を綺麗にするという”目的”や”機能”を、3Dプリンティングの新しいルールの上で製造化したからです。
今まであった物をもう1回いちから作り直したらどういう形になるだろうかと、人類の歴史を振り出しに戻ってやってる感覚なんで結構面白いんですよ。
── 同じ物が3Dプリントのルールの上で、全く新しい形状で生まれ変わる、大変面白いです。 アイデアの特許化を行う際に、Amplifiedをどう活用いただいているのでしょうか?
まずは、今お話ししたような、3Dプリンティング技術で可能になった新しい製品、アイデアを特許化する際の類似特許調査にAmplifiedを活用しています。僕の場合、新しいアイデアは反射神経的に自分の中で湧いてくるものなので、既存特許を参考にしてアイデアを練る、と言うことはまずありません。しかし、思いついたアイデアに近い物が「存在しない」ことを確認するために、Amplifiedで類似特許調査を行ってます。
論文を多数書いている中で、この技術ならこういった論文が出てるだろうという予測には慣れているので、特許調査でもこの製品なら、恐らくこういった特許があるだろうと予め予測し、キーワードでピンポイントで絞り込みます。リストにある特許をある程度見て、周辺の特許も確認して終わり、と言うイメージです。絞り込んでいっても全然似た特許が出てこない時にはキーワードを変えて違う方向から見たりしてますが、やっぱない、終わりっていうのは早いですね。時間で言うと、トータル数時間、短いケースでは数十分で終わります。
逆に、似たような特許がいっぱいある時は、まず抽出するのに1〜2時間ぐらい。その後、抽出した中からより類似性が高い特許を抽出するのに数十分くらい、新規性をきちんと洗い出すのに、プラス何時間。その場合でも、だいたい8時間以内で終わります。1日以内には終わる。
そして、業界毎の特許の傾向を確認するためにもAmplifiedを使います。
例えば、歯ブラシの業界について調べると、ブラシの立て方に関する特許、ブラシの断面に関する特許、持ち手に関する特許が多く出願されていることが判ります。従来の考え方だと、ここが気になる部分で差別化ポイントなっているのだな、と傾向を把握した上で、自分たちの特許の方針を決める。単純に類似特許を探すのではなく、傾向の把握を見込んで調査をしています。
── Amplifiedの導入を決めた理由を教えていただけますか?
身内からこういったサービスがあることを聞いて、面白いなと試してみました。
当時、月2件以上は特許を出願する計画だったので、特許事務所に類似特許調査を依頼した場合と、Amplifiedを使って自分で行う場合と、どちらの方がコストが安いかを計算した結果、月2件以上出すならAmplifiedを使った方が安いことがわかりました。
でもそれは単に「コスト」だけを比較した場合で、実際には「スピード」が決定的に違いますね。特許事務所に類似特許調査の依頼をすると、10営業日かかります。大体2週間後に3件程度の類似特許を出してくれて、これらを回避して作らないといけないですね、と。でも僕としては、ある程度ゴールが見えているので、類似特許が「ある」かどうかを確認するのではなく「ない」ことを確認して、出願までの時間を限りなく短縮したいという考えがありました。万が一、2週間差で他社に先行して出されたとしたら、こんな悔しいことはないですから。
加えて、僕が常に意識している「二歩くらい先」を行く特許の取り方を実現するためにも、Amplifiedのスピード感が必要でした。デジタルプラットフォームの新規事業では、実際リリース前にかなりの数の特許を出しました。今後、段階的に機能を公開していく中でも、公開日までに関連のある特許は押さえておくように準備しています。我々のサービスを見たら、この辺までは想像が付く人が一定数いるだろうな、というヒントになる機能に関しては、周辺の技術の特許を公開前に全て押さえておく。数十個の特許が、サービスの要となる部分をそれぞれカバーして、それこそAppleのiPhoneのように権利を侵しにくい製品が出来上がると思っています。
もちろん技術の権利を守ると同時に、外部に対してロイヤリティで利益を生むような特許も増やして行きたいと考えています。これはある程度、数の勝負になるところがあり、そのためのスピード感もAmplifiedが支えてくれています。Amplifiedを導入する際、実は他社のサービスを一切探しもしませんでした。なぜなら、Amplifiedを使って満足していたので、わざわざ他を調べる必要がなかったんです。仮に同じようなサービスがあったとしても、満足している中で、探す手間が見合わないと感じました。
── ありがとうございます。今後、力を入れていかれる事業について教えてください。3Dプリンティング技術で、誰もが良いものを手に入れられるデジタルプラットフォーム、新しいサプライチェーンの構築に力を入れていきます。
お客様が選んだものが1つから手に入る、3DプリンティングでAmazonに近い形を世界中に提供する、今それに向かって走っています。Amplifiedにはそのための知財パートナーとして、今のままその価値を提供し続けて欲しいと考えています。
株式会社3D Printing様は1月22日横浜ビジネスグランプリのセミファイナルと1月28日関東経済産業局委託事業地域企業・スタートアップ価値創造チャレンジ事業地域産業創出セミナーに登壇されるそうです。同社のこれからの成長にご注目ください。